冬うらら2

「お待たせしました…」

 そうしているうちに、メイが帰ってくる。

 このまま。

 メイの腕をつかんで、逃げてしまおうか―― カイトは、そういう提案を思いついた。

 車があるのだ。

 あとは、サイフさえあれば、どこででも時間はつぶせるだろう。

 よし。

 カイトは、椅子をくるっと回した。

 いま、自分が考えたことを実行しようとしたのだ。

 ぎょっ!

 しかし、目に飛び込んだものに驚いて、とっさに自分が何をしようとしていたのか吹っ飛んでしまった。

「きゃっ!」

 メイも驚いた声を上げた。

「やっぱり…すごくよく似合うわ……それ、私の時のなのよ」

 ハルコは。

 お茶を持ったままのメイに、真っ白い布っきれ―― いわゆる、ヴェールをのっけていたのだ。


 カイトは、口を閉じることも忘れて、そんな彼女に目を奪われてしまったのだった。
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