冬うらら2

 やめろ。

 胸まで、ギュウッとされるのだ。

 泣く女は、大嫌いだった。

 鬱陶しいと思ったし、女は自分の都合で好きに泣けるというところが嫌いな要因だったのだ。

 しかし、好きな女の涙だけは違う。

 こんなに、苦しい思いを味わわされる。

 カイトにとっては邪魔な行事でしかない結婚式とやらも、彼女にとっては一世一代の大舞台なのだ。

 うまく花嫁になれるかどうか、不安がっていた。

 不安なんかねぇ!

 カイトが持っている会社の株、全部賭けてもいいくらいだった。

 メイが、自分にとって世界一の花嫁になることなんか分かっていた。

 それを見た瞬間の自分は、きっとそこらの柱に頭くらいぶつけるに違いない。

「何も心配すんな…」

 しずくが、一粒玉になってくっついている首すじに、唇を寄せた。

 泣いている女を宥めるなんて技は、カイトにはない。

 辞書を全部探して逆さまにしても、ホコリくらいしか出てこない。

 けれども、慣れない口で彼は懸命にメイをあやした。

 2人。

 ゆだる寸前になって、ようやく彼女は落ち着いた。
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