冬うらら2
□
「手…握ってもいい?」
暗くしたベッドの中で、彼女はお願いするように言う。
風呂場での出来事から、何とか落ち着きはしたものの、不安は完全に払拭されていないようだ。
無造作に片手を伸ばすと、飛びつくように両手で触れてくる。
彼女のやわらかい手のひらに包まれると、カイトの方が落ち着かなくなりそうだった。
「もっと側によっても…いい?」
ぐいと抱き寄せる。
明日は、早く起きなければならない―― それは、さんざんソウマから言い含められていた。
だから、今夜くらいは我慢しようと思っていた。
彼だって、自制しようと努力しているのだ。
だから、あまり挑発されると困る。
本人にその気がなくても。
そのまま、しばらく無言だったので、眠ったかと思ってほっとしていると。
「カイト…起きてる?」
そっと呼びかけられる。
「ああ」
短く答えた。
抱きしめている腕の力を抜いていないのだから、それは彼女も分かっているだろうに。
「私ね…子供の頃、ずっと不思議に思っていたことがあったの」
その腕の中で、ぽつりと言葉が落ちる。
メイも、眠れないのか。
『緊張虫』用の殺虫剤でもあればいいのに、この世にはそんな便利なものはない。
「シンデレラは、お城の舞踏会で、転ばなかったのかなって…ほら、ダンスを踊るじゃない? 王子様と…ずっと掃除や洗濯をさせられていた彼女が、いきなりあんな大きな広間で、みんなが見ている前で、転んだり王子様の足を踏んづけたりしなかったのかなって…それが、ずっと不思議で」
胸の中に、唇を埋めるような声だ。
直接、カイトの心臓と話をしているかのように感じる。
彼の鼓動の速度を、聞かれるんじゃないかと思うくらいだった。
「手…握ってもいい?」
暗くしたベッドの中で、彼女はお願いするように言う。
風呂場での出来事から、何とか落ち着きはしたものの、不安は完全に払拭されていないようだ。
無造作に片手を伸ばすと、飛びつくように両手で触れてくる。
彼女のやわらかい手のひらに包まれると、カイトの方が落ち着かなくなりそうだった。
「もっと側によっても…いい?」
ぐいと抱き寄せる。
明日は、早く起きなければならない―― それは、さんざんソウマから言い含められていた。
だから、今夜くらいは我慢しようと思っていた。
彼だって、自制しようと努力しているのだ。
だから、あまり挑発されると困る。
本人にその気がなくても。
そのまま、しばらく無言だったので、眠ったかと思ってほっとしていると。
「カイト…起きてる?」
そっと呼びかけられる。
「ああ」
短く答えた。
抱きしめている腕の力を抜いていないのだから、それは彼女も分かっているだろうに。
「私ね…子供の頃、ずっと不思議に思っていたことがあったの」
その腕の中で、ぽつりと言葉が落ちる。
メイも、眠れないのか。
『緊張虫』用の殺虫剤でもあればいいのに、この世にはそんな便利なものはない。
「シンデレラは、お城の舞踏会で、転ばなかったのかなって…ほら、ダンスを踊るじゃない? 王子様と…ずっと掃除や洗濯をさせられていた彼女が、いきなりあんな大きな広間で、みんなが見ている前で、転んだり王子様の足を踏んづけたりしなかったのかなって…それが、ずっと不思議で」
胸の中に、唇を埋めるような声だ。
直接、カイトの心臓と話をしているかのように感じる。
彼の鼓動の速度を、聞かれるんじゃないかと思うくらいだった。