冬うらら2

 シンデレラ。

 子供の頃に、聞いたことがあるくらいか。

 カイトは、おとぎ話には興味がない。

 ゲームを制作する時に、時々モチーフとして使われることはあったけれども、その話自体には興味がなかった。

 ただ、余りに有名な童話だったので、話の筋くらいは知っている。

「魔法がかかってたんだろ…」

 カボチャが、馬車だったか?

 とにかく、そんなカンジだったはずだ。

 その時に、ガラスの靴を魔女がくれたのなら、ダンスを踊る能力だっておまけでくっつけてくれたのかもしれない―― その程度の、浅はかな答えだった。

 彼女の望んでいる言葉とか、そういうのは一切考えずに、ぽろっと口からこぼれただけ。

「そっか…魔法がかかってたのね」

 なのに。

 彼女は、喉にずっとつかえていた何がか、とけたように小さく笑った。

 そして、クマのぬいぐるみにそうするみたいに、ぎゅっと抱きしめられる。

「それじゃあ…私も、カイトに魔法をかけてもらったら…明日は転ばないかな」

 ま、魔法だと??

 彼女は、他愛ない言葉として出したのだろうけれども、彼の方は大変だ。

 一体、どんな魔法がかけられるというのか。
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