冬うらら2

「カイト!」

 ソウマは慌てたが、到底間に合うものではない。

「これでいい」

 カイトは、鏡に背を向けた。

 見えるのは、あきれたソウマの顔と、メガネの位置を治すようにしながら、彼を観察しているシュウの顔。

 花は、いらない。

 カイトにとっての花は、たった一輪だけだ。

 その花と一緒にいるのだから、わざわざ他の花は必要なかったのである。

 ため息の後に、ソウマが控え室の扉を開けた。

 寒風が、わっと吹き込んでくる。

 また一段と冷え込んだのだ。

 昨日よりも、一昨日よりももっと寒い二月。

 その空気の中に、彼らは足を踏み出した。

「お前は、先にドアの中に入っておけ」

 教会のドアの前で、ストップの手のひらを向けられる。

 ソウマに、だ。

 リハーサルの時点で、ソウマが新婦の父親役の代理をすることが決まっていた。

 カイトのところまで、彼女をエスコートしてくるのだ。

 教会の神父とやらが止めなければ、最初から自分が連れてくるところだった。

 厳格な聖職者というものほど、融通が利かないものがない―― と、いつぞ遅刻していったことを、咎められなかったことも棚に上げて、カイトは不満に思ったのだ。

 相手が、やんわりとした神父だったからこそ、カイトが引き下がったというのもあったが。

 そういうタイプは、昔から苦手だった。
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