冬うらら2

「それじゃあ…あ、カイト」

 新婦控え室に行きかけたソウマが、ふっと足を止めて戻ってくる。

 いやに神妙な表情だ。

「新郎の心得を、ひとつ」

 などと、手袋をした人差し指を立てる。

 かつて、ここで結婚式を挙げた先輩新郎様から、ありがたいご訓辞があるらしい。

 結婚式なんかやったこともないカイトは、その雰囲気に引っ張られて、思わず耳を傾けた。

 彼の知らない、新郎の作法などがあるのだろうか。

「……『誓いのキス』の時に、舌は入れるな」

 時が―― 止まった。


 カチ。


 コチ。


 カチコチ。


 ドガーン!


 カイトの蹴りが炸裂した。

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