冬うらら2
☆
いろんなことが、かなり自分でコントロールできるようになっていた。
それは、人生を楽しめる大きな力ではあったのだが、それだけでは、本当に自分の望む男ではないような気がしていた。
対外的な女性には、『優しい人』のレッテル程度でも全然オーケィだったが、この妻にだけは、いつまでも『男』と思われていたいのだ。
彼の頭の中で、妻が占める割合が上がりそうになった瞬間、猛犬注意の看板の陰からブルドッグが飛び出してきて、物凄い勢いで吠えたてた。
いまも、きっとまだカッカしているに違いない男の顔が、頭をよぎったのである。
可愛いブルドッグだったな。
さっきのカイトの様子を思い出してしまい、また笑いがこみあげてきた。
が、いつまでもこうして、のんびりしているワケにはいかなかった。
他の誰より我慢の効かない男で、あんまり待たせると教会内で騒動を起こしかねなかった。
ストッパーの役目であるソウマが、こんなところにいるのである。
周囲の人間は、さぞや取り押さえるのに苦労するに違いない。
「さて」
もう一度、乱れてもいない襟を正す。
今日の彼は、新婦の父親代理なのだ。
彼女の父親は、もうこの世には存在しない。
知らない相手ではあるけれども、ここはその人に向かって敬意と、ほんの少しの間だけ、大事にお預かりするという気持ちをしっかりと胸に抱えて。
「行こうか」
ソウマが新婦に近づくと、ヴェールがこくりと上下に動いた。
ハルコが、椅子から立ち上がる手伝いをしにいく。
裾や足元を、もう一度確認するように動かして。
「すごく、綺麗よ…だから心配しないで」
下からヴェールの中を覗き込むようにしながら、励ましの言葉をかける。
ということは、彼女はかなり緊張しているということか。
その上、慣れない格好と慣れない靴と―― 女性は大変だ。
男の身綺麗など、知れたものだと思った。
「は…い…」
震える声で、何とか返事をしましたというカンジで。
見事な緊張さ加減だ。
いろんなことが、かなり自分でコントロールできるようになっていた。
それは、人生を楽しめる大きな力ではあったのだが、それだけでは、本当に自分の望む男ではないような気がしていた。
対外的な女性には、『優しい人』のレッテル程度でも全然オーケィだったが、この妻にだけは、いつまでも『男』と思われていたいのだ。
彼の頭の中で、妻が占める割合が上がりそうになった瞬間、猛犬注意の看板の陰からブルドッグが飛び出してきて、物凄い勢いで吠えたてた。
いまも、きっとまだカッカしているに違いない男の顔が、頭をよぎったのである。
可愛いブルドッグだったな。
さっきのカイトの様子を思い出してしまい、また笑いがこみあげてきた。
が、いつまでもこうして、のんびりしているワケにはいかなかった。
他の誰より我慢の効かない男で、あんまり待たせると教会内で騒動を起こしかねなかった。
ストッパーの役目であるソウマが、こんなところにいるのである。
周囲の人間は、さぞや取り押さえるのに苦労するに違いない。
「さて」
もう一度、乱れてもいない襟を正す。
今日の彼は、新婦の父親代理なのだ。
彼女の父親は、もうこの世には存在しない。
知らない相手ではあるけれども、ここはその人に向かって敬意と、ほんの少しの間だけ、大事にお預かりするという気持ちをしっかりと胸に抱えて。
「行こうか」
ソウマが新婦に近づくと、ヴェールがこくりと上下に動いた。
ハルコが、椅子から立ち上がる手伝いをしにいく。
裾や足元を、もう一度確認するように動かして。
「すごく、綺麗よ…だから心配しないで」
下からヴェールの中を覗き込むようにしながら、励ましの言葉をかける。
ということは、彼女はかなり緊張しているということか。
その上、慣れない格好と慣れない靴と―― 女性は大変だ。
男の身綺麗など、知れたものだと思った。
「は…い…」
震える声で、何とか返事をしましたというカンジで。
見事な緊張さ加減だ。