冬うらら2

 リハーサルの時も、緊張していたのは分かっていた。

 腕を貸すものの、ぎこちない動きで横を歩いてくるので精一杯という様子だった。

 やはり、式の前にちょっとでも、カイトと会わせておいた方がよかったのだろうか。

 コホン、と一つ咳払いをして。

「大丈夫だ…カイトの顔を見たら、落ち着くさ」

 そうして、彼女に腕を差し出した。

 ハルコ公認の、短時間レンタルである。

 白い手袋に包まれた指が、こわごわ触れてきて。

 そのまま、気をつけてエスコートする。

 視線の端で、ハルコにアイコンタクトを忘れなかった。

 小さな歩幅で、ゆっくりと歩き出す。

 彼女が動くたびに、ドレスがふわりふわりとソウマにぶつかってきた。

 カイトが、うっかり裾を踏んづけたりしないかが心配だった。

 おっと。

 いつまでも、ニヤニヤしているワケには行かない。

 控え室を出ると、フラワーガールの女の子が、寒そうにぴょんぴょん跳ねていた。

 花嫁さんを発見するなり、更に興奮してしまったようだ。

 その子の母親が、子供の溢れるパワーを押さえ込むので大変そうだった。

 しかし、小さなレディは、綺麗な花嫁をすぐ側まで連れていくと、不意にしおらしくなってしまった。

 きっとこの子の頭の中に、『花嫁さん』へのあこがれを、くっきり焼き付けたに違いなかった。

 ちょっと遠巻きにしているのは、リングベアラーの男の子。

 ソウマが預かっていたリングは、既に渡してある。

 そんな大事なものを預かったまま、落ち着かなそうに―― しかし、その目はフラワーガールを見ていた。

 けれども、声をかけられない様子だ。

 いずこも同じ、というところか。

 どこにでも、そういう性格の人間はいるものだ。
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