冬うらら2

 トレイをがっちり握ったまま、フリーズしてしまったのである。

 まるで。

 白いモヤのような世界。

 そのモヤの向こう側で―― カイトが意を決したように振り返っていた。

 目が合う。

 そのモヤごしにではあるけれども、彼のグレイの目が自分の瞳と、正面衝突したのが分かった。

 あ。

 カイトの口は、そんな風に開いた。

 自分を見て、驚いている顔だ。

 そうして、彼もフリーズしてしまう。

 メイは。

 まばたきをした。

 しかし、モヤが取れない。

 もう一度。

 でも、ダメ。

 これ…・。

 メイは、いきなり視界を覆ったものが何であるか、理解しようとした。

 だが、それより早く口を開いた人がいる。

 ハルコだ。

「やっぱり…すごくよく似合うわ……それ、私の時のなのよ」

 私の時?

 言葉の意味が分からずに、きょとんとしてしまった。

 気づけば、目の前にはソウマが立っていて。

 カイトとの視線が遮断された。

「ほいほい、こういうのは向こうに置いて」

 彼は、いきなり手を出すと、メイからトレイを奪ってしまった。

 強引な受け渡しに、ガチャンとカップがぶつかり合う。

 あっと思っているうちに、彼女は白いモヤの中で手持ちぶさたになるのだ。

 ソウマの背中が、ガチャガチャとそのトレイをテーブルに置く背中を見ていた。
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