冬うらら2

 ぎゅっと、彼女の腕を掴んだまま。

 その手に力を込めて。

「誓います」

 絶対に、幸せにする。

 それ以外は、ありえねぇ。

『好き』を荒れ狂わせたまま、カイトは奥歯を強く噛んだ。


   ※


「続きまして、新婦に結婚の誓約をしていただきます…」

 進行の声に、カイトはビクッとしてしまった。

 そうなのだ。

 誓うのは、自分だけではないのである。

 メイも、この場で同じ血判証に判を押すのだ。

 大丈夫だ―― 自分に言い聞かせる。

 この式は、彼女が望んだものなのだ。

 それに、これまで自分に、好きの気持ちも伝えてくれたのだ。

 第一、既に社会的には、婚姻関係であることに間違いなかった。

 だから、今更こんなところで、覆されるはずなどないのである。

 それは、分かっているのに。

 どうして、こんなにまで胸が騒ぐのか。

「あなたはいま、この男性と結婚し、神の定めに従って夫婦となろうとしています」

 この、神父の諭すような声がいけない。

 周囲の、シンと静まり返った空気がいけない。

 彼を不安にさせる、何もかもがいけない。

 どうして、こんな大勢の前で、気持ちを確認させようとするのか。

 メイが、自分に向けて言ってくれた『好き』の言葉の重さを、みんなで何グラムあるのか眺めて、外野のクセに白か黒か判定されているような気がする。

 白いヒツジも黒いヒツジも、結局ラム・チョップになってしまえば、分からないというのに。
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