冬うらら2

 いや、違う。

 ヒツジの色を気にしているのは、カイトの方だ。

 彼女は、白いヒツジの上着も黒いヒツジの上着も、どちらも暖かいと言うかもしれない。

 しかし、カイトは真っ白な上着を着せかけたかった。

 周囲の人間が見ても明らかに、幸せに見えるようにしたかったのだ。

 頭の中を、色違いのヒツジが猛スピードで駆け抜ける中、しかし、時間だけはきっちりと律儀に進んでいく。

「あなたは、病めるときも、健やかなときも、豊かなるときも、貧しきときも、この男性を愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命の限り、かたく節操を守ることを誓いますか?」

 誓うに決まってんだろ!!!

 カイトは、即答で怒鳴りたい心をぐっとこらえた。

 これを答えるのは、彼の役目ではないのだ。

 2秒か。

 それとも、5秒か。

 それともそれとも―――――


「誓います…」


 不覚にも。


 鼻先が、ツンとした。


 今すぐ、抱きしめたかったのに。
< 386 / 633 >

この作品をシェア

pagetop