冬うらら2

 彼が身体をかがめたので、再びカイトを見ることが出来た。

 まだ。

 彼は、メイを見ていた。

 さっきとまったく同じ驚いた顔のまま。

 横から、すっとハルコの細い指が伸びてくる。それが、モヤを揺らした。

 ふわっと、まるで風に押し流されるようにモヤは消え、視界がクリアになる。

 何の邪魔もなく、はっきりとカイトが見えた。

 どうリアクションしていいか分からないまま、立ちつくしていると。

 その空気を破るように、ソウマが手を二度ほど打ち鳴らした。

 はっと我に返る。

 カイトの瞳も、同じように自分を取り戻した。

「さあて、新郎新婦さんたち…打ち合わせに入ろうか」

 よどみないソウマの強引な笑顔に気を取られて、彼女はしっかりと言葉を聞き取ることが出来なかった。

 いま―― 何と言ったのか?
< 39 / 633 >

この作品をシェア

pagetop