冬うらら2

 ゆ、ゆっくり。

 赤くなりがら、メイはそっと彼の左手を取った。

 ヴェールの下の方から見える空間を利用して、指輪の位置を調整する。

「ヴェール、ヴェール!!!」

 もう一つの、大きな忘れ物に気づいていたらしい外野の声は、既に遅かった。

 メイは、指輪をはめ始めてたのだ。

 パシャパシャと、フラッシュがたかれる。

 カイトの指が、イヤそうに緊張したのが分かった。

 けれども、止められるはずもない。

 メイは、心持ちゆっくりと。

 しかし、決して遅くなりすぎないように、彼の指輪をはめきったのだった。

 おかげで。

 出来上がった写真のほぼ全てが、ヴェールをかぶったままの新婦が、新郎に指輪をはめているという珍しいものになったのだ。

 奇跡的に、新婦に指輪をはめている姿の撮影に成功した写真が、一枚だけあって。

 その撮影に成功したのは、ハルコから頼まれていたシュウだった。


 メイの宝物の一つになった。
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