冬うらら2

 ソファに座ったメイは、膝の上に白いモヤを乗せていた。

 ハルコが頭から下ろして渡してくれたそれは、世間一般ではヴェールという代物だ。

 何というか、主に結婚式の時などで、花嫁さんが使用するグッズの一つである。

 シュルシュルの触り心地を、彼女は落ち着かないまま撫で続けた。

 カイトは、隣に座っている。

 ソウマたちは、向かいに並んで。

 そして、テーブルの上には、お茶と―― パンフレットの山。

「一応、来月に仮押さえしてきたぞ…会社の都合なんかをシュウに聞いて、ちょうど納期開けすぐだ。週末は無理だったが…平日でもかまわないだろう?」

 すらすらと。ソウマはまったくつかえる様子もなく、さも当たり前のように言葉を続ける。

 よく分からないけれども。

 話が、どんどん進んでいく。

 ちらりと横を見る。

 すごく不機嫌そうな顔のカイトがいた。

 無理矢理、この土俵に引きずり上げられたことが、不満でしょうがないという様子だ。

「何の話だ?」

 ソウマという存在自体に反発した声で、カイトは言葉を遮った。

 彼に持ちかけられる話は、どれもこれも気に入らないのだ。

 内容ではなく、誰が、というところが一番のポイントのようだった。

「何の話って……結婚式に決まっているだろうが」

 この状況を見て、何故分からないのかが不思議そうに、ソウマは眉を寄せた。ふふふ、とハルコが笑う。

 確かに。

 式場とかそれ関連のパンフレットを山と積まれて、なおかつ、メイの膝の上ににはヴェールが置いてあって、そして―― 婚姻届を出したばかりの二人がここにいるのだ。

 結婚式、という言葉は容易に想像がつく。

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