冬うらら2

「何で、んなコトしなきゃなんねーんだよ! 勝手に決めんじゃねー!!!」

 その言葉について、彼女はいろいろゆっくりと考えようとした。

 しかし、すぐ隣からの怒鳴り声に、いろんなものが一瞬で吹っ飛んでしまう。

 ひゃーっと、反射的に身をすくめてしまった。

 やはり、相手がソウマだとこういう状態になってしまうのだ。

「あら…でも、結婚式くらいちゃんとしないと…それに、ウェディングドレスは、女の子の夢ですもの…」

 そんな怒鳴りには、ビクともしないハルコは、視線をぱっとメイに向ける。

 まだ、さっきの音量に、毛を逆立てたままだった彼女は、不意打ちをくらってしまう。

「え…あ…あの…」

 ウェディングドレス。

 ちらっと見えた、テーブルの上のパンフレットには、真っ白いウェディングドレスを着たモデルさんが、すごく幸せそうに微笑んでいた。

『お父さん…私の結婚式で…泣く?』

 そう聞いたら笑っていた。

 お前が着られるウェディングドレスがあればいいなと、チャカしさえした。

 でも、きっとお父さんは泣く―― 分かっていた。

 記憶の。

 フラッシュバック。

「あの…でも、別に…」

 慌てて、それを振り払う。

 式を挙げるということが大事なんじゃないんだと、自分に言い聞かせる。

 いま、誰かに『幸せ?』と聞かれたら、きっと誰にでも「YES」と答えられる。

 その事実だけでいいのだ。

 これ以上を望んだりしたら、本当にバチが当たってしまう。

「ダメよ、遠慮なんかしちゃ。一生に一度しか着られないのに…後から着ればよかったって思っても、もう遅いのよ」

 大事な、それで素敵な思い出になるわ。

「経験者の私が言うんだから…本当よ」

 見るからに幸せそうなハルコが、にこにこと続ける。

 まるで、自分がもう一度ウェディングドレスを着られるかのような笑顔だ。
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