冬うらら2

 ブーケが空を舞った時、まるで奇跡のように雪が降り始めた。

 それに見とれていたハルコの乙女心は、ある光景のせいで砕け散った。

「まぁ!!」

 独身女性の輪の中で、ブーケを受け取っていたのは―― 誰あろう、彼女の同級生だったのである。

 今回の結婚式への招待状を、もらっているハズはなかった。

 何しろ、未だ住所不定のままなのだ。

 あの飲み屋こそ、確かに存在してはいるものの、どういうツテなのか、別の名義で借りられているという怪しさだった。

 メイに居所を聞いて駆けつけた日は、あいにくの定休日で。

 日を改めて行ったところ、ハルコの顔を見るなり、イタズラが見つかった猫みたいな顔をしたのだ。

 昔から、まったく変わらない表情だった。

『まあまあ、固いこと言わないで…私はここにいるから、また遊びに来てよ』

 その日は、「唐揚げにするとおいしいわよ」と、味付けされた鶏肉らしきものをもらって、丸め込まれたようにして家に帰されたのだ。

 確かに、唐揚げはおいしかったけれども。

 その彼女が。

 またも、花嫁のブーケをゲットしているのである。

 どこから、情報を仕入れてきたのか。

 あの2人が結婚する、ということは―― 確かに、尋ねて行った時に話したが、詳しいことまではしゃべっていないのに。

 ハルコの式の時と、まったく同じだった。

 このまま逃げられてはかなわないと、ハルコは人混みを分けて、彼女の元にたどりついた。

「あら、ハルコ…そんなに慌てると危ないわよ」

 きっと、彼女なりにハルコのお腹のことを、気にかけてくれているのだろうが、話をそらされているような気もした。
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