冬うらら2
披露宴
控室
□84
「はい、ここで待っていてね」
にこにこ笑顔のハルコが、彼ら2人を控え室に案内する。
本来そういう仕事は、披露宴のあるホテルの従業員がするだろうに、この妊婦ときたら、どんな招待客よりも元気だった。
「お、結構広いな」
オマケで、その亭主がついてこなければ、もっといいのだが。
カイトは、思わず半目になってしまった。
夫婦のどちらも苦手だが、わざとイヤな言葉を選んだようにして絡んでくる分、ソウマの方がより苦手なのだ。
「もうすぐ披露宴会場に人が入り始めるから、全員席についたら、そこにあなたたち2人が華やかに登場するのよ…ふふふ」
ハルコは、既にそのシーンを想像したのか、微笑みを浮かべた。
前言撤回。
妻の方も、かなり苦手だ。
カイトは、顰めっ面をしたまま、はやくこの2人が出ていくことを望んでいた。
のだが。
控え室から人数が減るよりも先に。
「おねえちゃん!」
どこから嗅ぎつけたのか、ちょろちょろとした物体が控え室に飛び込むと、ウェディングドレスに抱きついたのである。
「ユウちゃん!」
メイも膝を折るようにして、その物体をのぞき込む。
「こら、ユウ!」
後ろからは、人間離れしているバカでかい夫婦がオマケでついてきた。
一気に、人口密度が高くなる。
ついでに―― 平均身長も。
思い出すまでもなかった。
あの魚屋の一家だ。
「結婚式、ユウも出たんだよ! 手振ったのに…」
馴れ馴れしく、メイにべったりくっつく小僧は、興奮したように言葉を続ける。
あの時ほど、ひどい鼻声ではなかったが、まだカゼっぴきみたいな声だ。
「はい、ここで待っていてね」
にこにこ笑顔のハルコが、彼ら2人を控え室に案内する。
本来そういう仕事は、披露宴のあるホテルの従業員がするだろうに、この妊婦ときたら、どんな招待客よりも元気だった。
「お、結構広いな」
オマケで、その亭主がついてこなければ、もっといいのだが。
カイトは、思わず半目になってしまった。
夫婦のどちらも苦手だが、わざとイヤな言葉を選んだようにして絡んでくる分、ソウマの方がより苦手なのだ。
「もうすぐ披露宴会場に人が入り始めるから、全員席についたら、そこにあなたたち2人が華やかに登場するのよ…ふふふ」
ハルコは、既にそのシーンを想像したのか、微笑みを浮かべた。
前言撤回。
妻の方も、かなり苦手だ。
カイトは、顰めっ面をしたまま、はやくこの2人が出ていくことを望んでいた。
のだが。
控え室から人数が減るよりも先に。
「おねえちゃん!」
どこから嗅ぎつけたのか、ちょろちょろとした物体が控え室に飛び込むと、ウェディングドレスに抱きついたのである。
「ユウちゃん!」
メイも膝を折るようにして、その物体をのぞき込む。
「こら、ユウ!」
後ろからは、人間離れしているバカでかい夫婦がオマケでついてきた。
一気に、人口密度が高くなる。
ついでに―― 平均身長も。
思い出すまでもなかった。
あの魚屋の一家だ。
「結婚式、ユウも出たんだよ! 手振ったのに…」
馴れ馴れしく、メイにべったりくっつく小僧は、興奮したように言葉を続ける。
あの時ほど、ひどい鼻声ではなかったが、まだカゼっぴきみたいな声だ。