冬うらら2

 カイトが笑うと―― いきなり心が騒ぎ出す。

 ずっとむっつりしていた彼が、今日初めて笑った。

 理由は、きっとユウの言葉。

 そう思うと、すごく嬉しかった。

 ユウが、機嫌の悪そうなカイトに話しかけた瞬間、メイはどきりとしたのだ。

 まさかとは思うが、こんなところで子供を怒鳴ったりしないか、心配だったのである。

 ソウマや、両親に対する態度ばかりを見ていたので、その印象の方が強かったのだ。

 ユウは、好奇心は旺盛だが、気が余り強くはない。

 のっけから手厳しい反応が返ってきたら、カイトのことを怖い人だと思ってしまうかも、と一人ハラハラしていた。

 なのに。

 ずるずる、引きずられていくユウを見送った後。

 こみ上げてきたものを押さえきれないように、クッと笑ったのである。

 あっ。

 心が、ぴょんと長い耳を立てた。

 嬉しくてしょうがなかった。

 カイトは、決して子供が嫌いなワケではないのだと分かったからだ。

 そして、誰にでも怒鳴ったりするような人でないということも。

 ユウがKO-NANのゲームをしていたことがおかしかったのか、それをこんなところで話しかけてきたのがおかしかったのか―― メイは、うまく翻訳はできなかったけれども。

 大好きな人たち同士には、やっぱり仲良くして欲しいのだ。

 ユウやリン夫婦は、メイの数少ない大事な人たちなのだから。

 今度、誕生日プレゼントにでも、ゲームを送ってあげようかな。

 勿論、そのゲームとは、カイトの会社のものである。

 どのゲームがいいか、彼に相談すればいい。

 そうすれば、夕食の時や部屋でのお茶の時なんかの話題にもなるし、きっとそういう方面なら、カイトだってたくさんしゃべってくれると思ったのだ。

 一緒に、買い物に行ってもいいし。

 想像するだけで、彼女はわくわくしてしまう。
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