冬うらら2

 カイトと一緒に出かけることなど、スペシャルなメニューの一つなのだ。

 たとえ、それがスーパーマーケットであっても、オモチャ屋であっても。

 メイは、自分の想像にすっかりハイテンションになってしまった。

 そういう気持ちのまま、カイトに話しかけてしまったものだから、おかしいくらいに勢いがつく。

 しかし、その話はすぐに打ち切られた。

 メイクの直しに、引っ張られてしまったのである。

 そうなのだ。

 ユウの事件で忘れていたけれども、いまはまだ披露宴前なのだ。

 これから、大勢のお客様の前に出なければならない。

 カイトが、恥ずかしくない奥さんでいないと。

 少しでも綺麗に見えるように、メイクを直してもらうと、わずかだけれども気が楽になる。

 結婚式の時には、一人一人の顔を見ることはなかった。

 しかし、今度は間近でカイトの友人や取引先の人や、会社の社員さんを見ることになるだろう。

 変な振る舞いをしたら、彼の評判にかかわってしまう。

 せっかくユウの存在が、緊張感をぬぐい去ってくれたというのに、再び彼女は使命に燃えて身体を固くしてしまった。

 だが、それは結婚式の時ほどではない。

 きっと。

 カイトが、笑ってくれたおかげだ。
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