冬うらら2

 よしよし。

 この男を、無事披露宴会場まで引きずりこめたので、一人でソウマは悦に入っていた。

 やはり、メイの魔法は偉大だ。

 引き離すと危ないが、側にさえ置いておけば、こんなにおとなしくなるとは―― 本人が聞いたら、暴れ回りそうなことを考えて、感心してしまう。

 嬉しそうなハルコの様子を見ると、更にソウマはご満悦になるのだ。

 彼にとっては、ダブルで楽しいことだった。

 しかし、カイトのオーラときたら、「お前は出ていけ」というのが、はっきりと現れていて。

 こんなに協力した人間に対して、ひどい仕打ちだ。

 だが、ソウマは口で言われないのをいいことに、その表情をすべて気づかないフリをして、にこやかな態度を続けた。

 これからの披露宴は。

 ソウマとハルコが、心を込めて選んだプランだ。

 といっても、スモークでゴンドラで登場、ということではない。レーザー光線もナシだ。

 最初にソウマは、すっぽかされたことでカチンときて、目にものを見せてやろうと、とんでもないプランをくっつけようとしたのだが、優しく妻に諭されてしまった。

『あんまりひどいのにすると、開始早々逃げられても知らないわよ』と。

 さすがに、それは困る。

 すっぽかされた披露宴の後のフォローは誰がするのか―― 考えたくなかったのだ。

 だから、内容的にはプレーンなものに押さえた。

 が、しかし。

 ふっふっふ。

 ソウマは、笑顔の質を変えた。

 彼は、ただおとなしく今日という日を、終えるつもりはなかったのだった。
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