冬うらら2

 一番真ん前の席を目指して、やはりダッシュしてしまいたい衝動にかられた。

 こんな拷問は、一秒だって早く終わらせたかったのに、ここに入る前のハルコの言葉がプレイバックする。

 メイを、転ばせるワケにはいかなかった。

 だからこそ、うずく足を押さえ込んで、一歩ずつ着実に歩くのだ。

 ハルコの一言さえなければ、もっと早く歩いていたに違いない。

 忌々しい言葉だ。

 彼らが一歩進むごとに、ライトが追いかけてくる。

 とことん、2人を主役にしたくてしょうがないようだ。

 しかし、彼にとってはそれは、監獄のサーチライトに等しかった。

 ぐぐぐぐぐ。

 カイトの額には、おそらく「忍」の一文字が、浮き上がっていたに違いなかった。
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