冬うらら2

「新郎新婦の入場です!」

 声高らかに告げられた後、一番後ろのドアが重々しく開いた。

 暗かった会場内に、ぱっと白いスポットライトがともる。

 その中央には――

 まあまあ。

 拍手をしながら待っていたハルコは、思わずにっこりしてしまった。

 とっさにメイが、ぎゅっと彼の腕にしがみついたのが見えたからだ。

 その光景は、微笑まし過ぎる。

 何と、仲睦まじいカップルなのか。

 いや、いかに睦まじいかくらい、ハルコはたくさん知っている。

 外部の人間では、おそらく彼ら夫婦ほど、あの2人のことを知っている者はいないだろう。

 しかし、いま見えている姿は、それを知らない人間にも、2人の関係を教える一瞬でもあったのだ。

 ハルコが、最初にクギを刺したことをどうやら覚えているらしく、カイトがダッシュをすることはなかった。

 それどころか、ちらりと横を気にするような視線を投げながら、注意深く足を踏み出すのである。

 とんでもなく、面白くない顔をしたまま。

 そのギャップが、たまらない。

 こんな披露宴なんか、投げ捨てたくてしょうがないくせに、それをぐっと我慢しているのだ。

 あのカイトに、ここまで我慢させるなんて。

 メイという存在の偉大さが、はっきりと分かった。

 会社の人間たちは、さぞや驚いていることだろう。

 特に、ハルコの後に秘書になったリエなど、きっと今頃、目をむいているに違いない。

 そうして、頭の中には、「あの社長が」という言葉が、渦巻いているに違いないのだ。

「コウノ」として、カイトを慕っている開発の男たちも、きっと今日の彼には驚いているはずだ。

 彼らのイメージの「コウノ」とは、きっとコンピュータ・バカで、わがままで、そして披露宴などで、スポットライトなどを浴びることなどない―― そういうものだろう。
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