冬うらら2

 これは、現物を見たリエでさえ目を疑ったのだから。

 そんな、社長にとって別格の女性をじっと見る。

 が。

 取り立てて、どこがどうというタイプではなかった。

 確かに、ウェディングドレスと化粧で綺麗には見えるが、顔立ち自体が美人というワケでもない。

 実際、新婦についてはナゾが多かった。

 普通ならば、会社で相手がいくつだとか、どういう人かという噂くらい回りそうなものなのに、何も耳に入ってこなかったのだ。

 披露宴なのだから、どこかで彼らの過去について仲人から―― あら?

 そこで、はっと気づいた。

 仲人らしき姿が、どこにも見あたらなかったのだ。

 前の席にも、いま入場してくる場面にも、どこにもそんな人が見つからなかった。

 仲人、なしなの???

 鋼南電気株式会社、代表取締役社長の披露宴なのに。

 なのに、仲人なしとは。

 呆れながらも、あの社長なのだと思うと、納得出来るような気もした。

 誰かに、ご指導ご鞭撻を賜るような男でないことは、リエは重々承知していたのである。

 はぁ。

 そして、式が終わっても、付き合いは続くのだ。

 リエは、思わず深いため息をもらしてしまったのだった。
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