冬うらら2

 そう言えば。

 こんなに沢山の人間の前に、彼女をさらしたことなどなかった。

 彼と出会う前は知らない。

 しかし、あの家にいる間は、本当にわずかな人との接触しかなかったのだ。

 しかも、ほとんどが安全パイな男ばかりだ。

 ソウマは結婚しているし、シュウに至っては色恋というパーツ自体が欠落しているので、「男」の範疇には入れなくてもいい。

 そんな安全圏の中に置いていて尚、カイトはずっと心配だった。

 ということは。

 安全圏外にさらせばさらすほど、メイをかどわかす男が、現れる可能性が高いということだ。

 たとえ、彼女の気持ちが揺るがなくても、相手にヨコシマな気持ちがあれば、いくらでも騙せるのではないだろうか。

 汗が、たらっと流れた。

 ここまで、具体的な不安を考えたことがなかったのだ。

 だが、カイトは気づいていなかった。

 自分が、いかに好きだからと言って、かけがえのない女だからと言って、周囲の人間にもそうだとは限らないということを。

 しかし、カイトは自分の目についているフィルターを、そのまま世間に適用して考えてしまったのだった。

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