冬うらら2

 むむっ。

 アオイは、眉を顰めた。

 祝辞のために立ち上がった男は、彼の席の近くで―― そして、大変に若かったのである。

 肩書きを聞くと、どう聞いてもカイトよりも下の役職だ。

 祝辞というものを、あの男は勘違いしているのではないかと、じっと高砂の方を見やるが、こんなめでたい席だというのに、TPOをわきまえないぶすったれた表情で、新郎カイトはそこに座っていた。

 まったく。

 カイトが結婚するという話を、シュウから持ち込まれた時は、彼は正直驚いたのだ。

 持ち込んだ見合いを断られて、ほんの2ヶ月ほどしかたっていなかったのだから。

 しかも、まったく式当日まで、余裕のない時に聞かされたのだ。

 だから最初は、あの男が不埒にも婦女子を手ごめにして、やや子を孕ませたかと思った。

 あの男なら、やりかねんとも、正直なところ思ったのだ。

 しかも。

 相手が、あの女性であると聞いて、殊更その推理に確信を得てしまった。

 あの女性。

 それは、アオイが見合い話を持ち込む時までさかのぼる。

 その時に家にいたのが、いまの新婦だ。

 どういう立場なのかを丁寧に訪ねたところ、『使用人』だと答えた。

 あれだけ広い家である。

 しかも男所帯で、二人とも会社内の立場が高いのだから、使用人くらいいてもおかしくなかった。

 だからアオイは、それを納得したのだ。
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