冬うらら2

 本当に。

 男同士の友情というのは、メイの想像を超える時がある。

 ソウマとシュウの姿は、はっきりとそれを感じさせてくれた。

 カイトとソウマも、カイトとシュウも。

 この3人の関係は、滅多に生まれない奇跡の三角形をしていた。

 それぞれの辺の長さは違うのに、出来上がってみると、こんな三角形は、他に2つと見つけることが出来ないだろうと思わせる。

 それぞれが、まったく違う性質と才能を持っていて、それぞれが互いの足りない部分をおぎなって、より魅力的に見せるのだ。

 そんな男の人たちの中に、メイは割って入ることは出来ないけれども、こうやって見ているだけで幸せだった。

 そして、いまマイクの側にいる2人は、カイトにとっては大事な、なくてはならない三角形の二辺なのだ。

 男に好かれる男が、いい男だ―― 父親の言葉を借りるなら、カイトはとてもいい男ということになる。

 あのチーフの祝辞にも、カイトへの好意があふれていた。

 そんな人と結ばれて、本当に自分は幸せだと、つくづくと感じることが出来たのである。

 乾杯のお酒に唇をつけることも忘れて、メイはその気持ちを身体中で味わったのだ。

 ふっと。

 視線を感じて、顎を動かすと。

 カイトが、こっちを見ていた。

 何か言いたげな表情だったが、こんなところで話しかけることが出来るはずもなく、彼はすっと視線を動かした。

 ???

 こんな時の気持ちは、翻訳が出来ない。

 翻訳する材料が、何もないからだ。

 不機嫌に見えるのは気のせいなのか、それとも本当にそういう気持ちなのか。

 しかし、カイトにとっては、今日の何もかもが嬉しいことではないだろうから、そんな表情であっても何ら不自然ではないのかもしれない。


 結局、彼女はグラスに口紅の跡をつけることなく、乾杯を終えたのだった。
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