冬うらら2

 どこに。

 ハルコは、首をめぐらせた。

 すると。

 まあ。

 まるで、忍者ごっこでもしているかのように、ソウマはそぉっと音を立てないように、シュウの背後に忍び寄っていたのだ。

 副社長自身は、気づいていないようだが、周囲の人間は全て「何事か?」というカンジで、彼のすぐ真後ろに迫ったソウマを見ていた。

 すっ。

 そして、いきなり。

 ソウマは、手を伸ばしてマイクを強奪したのだ。

「それでは、皆様…」

 いきなり、夫の声がマイクから流れ始める。

 周囲の人間が、唖然としている隙間をうまくついて―― 彼は、力ワザで『乾杯』に持ち込んでしまったのだった。

 まったくもう。

 絶妙の2人の表情は、それ自体が既に余興と化している。

 みんな「乾杯」とお酒に口をつけながら、さっきまでのつまらない長話を忘れたかのように楽しげだ。

 カイトくんも入れて、トリオで売り出せばいいのに。

 自分で考えたことに自分でウケて、ハルコはなかなかグラスに口をつけることが出来なかった。
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