冬うらら2

「服なら、お姉ちゃんに借りればいいじゃない」

 ツキは、隣の部屋を指す。

 確かに、一般ウケのいいおとなしめな服なら、1号の方が持っているに違いない。

「うー…だって、いま1号怒ってるもん」

 ちょっと、クマパンチしてただけで。

 ぷい、とハナは、自分も不機嫌であることをアピールした。

 披露宴には行けない、姉には怒られる、チョコレートの味見は出来ない―― 最低だ。

「まったくもう…ほら、一緒に謝ってあげるから」

 着替えを終えた2号に引っ張られる。

 何だか、気がつけばいつもこういうカンジだ。

 1号と絡むことが多いのだが、ハナがいつもムチャクチャやるので、バツが悪くなることがある。

 そういう時には、2号が必ずバランスを取ってくれるのだ。

 おとなしいのと勝気という、両極端な性格の真ん中に挟まると、イヤでもそうなってしまうのかもしれない。

 ハナには優しく、ユキには強く接してくれるのは、これまでの付き合いで手に入れた知恵なのか。

 どういう理由にせよ、ハナのプライドに障らないようにうまく扱ってくれる2号は、大好きだった。

 子供の頃から、余計なことを言って親に怒られた後、迎えに来てくれたのは必ずツキだ。

 1号は、探しに出たら自分の方が迷子になる可能性があったので、親が出してくれなかったのである。

 その度に、『一緒に謝ってあげるから』だった。

 どうにも、その言葉は「三つ子の魂百まで」となり、彼女にとって弱い言葉になった。

 そう言われると、さすがのハナも小さな子供に戻ったみたいに、「うん」と言わなければならないような気分にさせられるのである。
< 460 / 633 >

この作品をシェア

pagetop