冬うらら2
ウェディングケーキ入刀
●88
ドアが開いて―― ケーキが、運びこまれてくる。
それに気づいて、メイはドキリとした。
いままでは、ただここに座っていればよかったのだが、ついにその時間に終わりがきたことを知ったのである。
これから、2人でケーキにナイフを入れなければならないのだ。
ウェディングケーキ。
子供の頃。
いや、リンが結婚する時もそうだった。
メイは、いつもニセモノのケーキばかりを見て、がっかりしていたのだ。
これが全部本物だったら、どんなにステキなんだろう。
子供の頃に見た、外国映画がいけなかったのだ。
みんなに、切り分けられるケーキ。
きっと、幸せな味がするに違いないと―― クリスマスケーキのように、味にまで夢見てしまうのだ。
あっ。
クリスマスケーキ。
ふっと思い出してしまったことに、彼女は慌ててフタをした。
そのことは、いまこの席で思い出すべきことではなかった。
もう、一生思い出す必要もないことだ。
これからは、2人でずっと幸せな味のするケーキを食べればいいのである。
クリスマスも、誕生日も、結婚記念日も。
いつか生まれくる子供がいるとしたら、その誕生日にも。
カイトは、甘いものが苦手のようだから、ちょっとだけ付き合ってもらって。
もしも市販ので甘すぎるなら、メイが甘くないように焼けばいいのだ。
ああ。
うちには、オーブンがなかったっけ。
メイは、自分の計画がいきなりポシャッたのに気づいた。
でも、いいのだ。
そんな空想をするだけでも、自分が幸せなのが分かる。
誰かと、一緒に食べるケーキのことを、考えているのだから。
ドアが開いて―― ケーキが、運びこまれてくる。
それに気づいて、メイはドキリとした。
いままでは、ただここに座っていればよかったのだが、ついにその時間に終わりがきたことを知ったのである。
これから、2人でケーキにナイフを入れなければならないのだ。
ウェディングケーキ。
子供の頃。
いや、リンが結婚する時もそうだった。
メイは、いつもニセモノのケーキばかりを見て、がっかりしていたのだ。
これが全部本物だったら、どんなにステキなんだろう。
子供の頃に見た、外国映画がいけなかったのだ。
みんなに、切り分けられるケーキ。
きっと、幸せな味がするに違いないと―― クリスマスケーキのように、味にまで夢見てしまうのだ。
あっ。
クリスマスケーキ。
ふっと思い出してしまったことに、彼女は慌ててフタをした。
そのことは、いまこの席で思い出すべきことではなかった。
もう、一生思い出す必要もないことだ。
これからは、2人でずっと幸せな味のするケーキを食べればいいのである。
クリスマスも、誕生日も、結婚記念日も。
いつか生まれくる子供がいるとしたら、その誕生日にも。
カイトは、甘いものが苦手のようだから、ちょっとだけ付き合ってもらって。
もしも市販ので甘すぎるなら、メイが甘くないように焼けばいいのだ。
ああ。
うちには、オーブンがなかったっけ。
メイは、自分の計画がいきなりポシャッたのに気づいた。
でも、いいのだ。
そんな空想をするだけでも、自分が幸せなのが分かる。
誰かと、一緒に食べるケーキのことを、考えているのだから。