冬うらら2

「お待たせ致しました。これより新郎新婦によりまして、ウェディングケーキに愛のナイフを入れて頂きます。カメラをお持ちの方は、どうぞ前の方にお進み下さい」

 椅子を引いてもらって、メイは立ち上がった。

「尚、本日のケーキは、お二人の御要望によりまして、全て本物の特製のケーキを御用意致しました。後程、皆様方のテーブルに、デザートとしてお配りする予定となっておりますので、楽しみにお待ち下さい」

 あっ。

 カイトと一緒に、ケーキの方に行こうとしていたメイは、その言葉に足を止めた。

 2人の要望も何も―― そんな要望は、メイは出していないのだ。

 まさかカイトが、と思って彼の方を見ると、向こうも『そうなのか?』という目でこっちを見ていた。

 エスパーのように、彼女の心を読んでカイトが出した要望でもなさそうだ。

 どうして。

 と、思いかけて。

 さっきの、ニセモノのウェディングケーキの話を。

 そういえば、ハルコにしたことを思い出したのだった。

 メイは、ぱっと視線を動かした。

 大勢の招待客の中から、彼女を探そうとしたのだ。

 だが、前の方の席にいないのか、すぐには見つけることが出来ない。

 ソウマなら、カメラを持ってケーキの側に近づいてきているというのに。

 彼女が、その要望を出してくれたに違いない。

 披露宴の流れは、全て彼らが組んでくれたのだから。

 本当に。

 この世には、天使のように気がつく人がいる。

 どうして、こんなに他人の気持ちを汲み取って、心配りの出来る人がいるのだろうか。

 そして、どうしてそんな素敵な人が、自分の側にいるのだろうか。

 ハルコもまた、カイトという茎から咲いた花だ。

 そして―― いつも気づくと、メイの手の中には花束がある。

「メイ…?」

 足を止めたまま、ハルコを探していた彼女を、不思議に思ったのだろう。

 カイトが―― ああ。

 また、花束がきた。


 カイトが。


 名前を呼んでくれたのだ。
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