冬うらら2

 リボンを巻き付けたナイフが渡された時、ケーキよりもそのモンスターたちを、叩っ斬りたい衝動にかられた。

 しかし。

 メイの瞳が、自分を見ている。

 さっきの、乾杯の酒に酔ったのだろうか―― いや、飲んでいなかったように思えた。

 嫉妬がわきあがっていた時なので、正確なところは定かではないが。

 でも。

 いまの彼女は、カメラを気にしていないようにさえ思えた。

 その瞳を、壊したくなかった。

 2人でナイフを持って、真っ白なケーキの前に立つ。

 カイトの知るウェディングケーキとは、ちょっと違った。

 タテナガなのは一緒だったが、全部くっついて重なってはいないのだ。

 二段目の部分は、別の支えのある皿の上に乗っていて、三段目もそんな感じで。

 くっついて重なっているケーキは、きっとニセモノケーキだったのだろう。

 元々、ケーキを好きではない彼だ。

 本物かニセモノかなんて、調べようとも思っていなかった。

 係の男が、この辺りをと指示をする。

 ナイフで、ざっくり行けというところなのだろう。

「ゆっくりだぞ!」

 さっきの結婚式のことが、尾を引いているのだろう。

 もう容赦することなく、ソウマがはっきりとそれを言った。

 ギロリと睨んでやりたかったが、メイのいま着込んでいる雰囲気には抗えない。

 仏頂面のまま、ケーキを切ることに意識を向ける。
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