冬うらら2

 カイトは。

 寄り目になったまま、フリーズしていた。

 いま。

 おそらく間違いなく、頭の中で山のような葛藤が巡っているはずだ。

 人生とかプライドとか人目とか。

 とにかく、いろんなものがごちゃまぜになって、納得行く結果を出そうとしているに違いない。

 だが、自分を納得させる言葉など、見つかるはずがないのだ。

 ぐぐぐぐぐ。

 カイトの手が、握り拳になった。

 何かに耐えているようなそれのせいで、カメラが笑いに揺れそうになる。

 ぐっと手を安定させた。

 その唇が。

 いままで、鉄の門のように閉ざされていたそれが、一人の女性の前に、ようやく開門したのである。

 ソウマは、容赦なくシャッターを切った。


 1枚、2枚、3枚、4枚、5枚、6枚、7枚、8枚―― 以下略。
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