冬うらら2

 あ、あれは。

 カイトの名誉のタメに、彼がこういう式などが苦手な人だと伝えようとした。

 それより先に。

「メイは、いま幸せ??」

 そう聞かれた。

 借金のために、怪しい店に連れて行かれる寸前―― 最後に、相談をした友達だった。

 一緒に泣いてくれて、何度も『助けてあげられなくてごめんね』と、しがみついてきた友達だ。

 あの時、一番メイのことを心配してくれた人でもあった。

 本当は、リンに相談しようと思っていた。

 しかし、彼女の性格からすると、お金を貸してくれた人と、大ゲンカすることは分かっていた。

 そうなると、迷惑がかかってしまう。

 だけども、1人、心の中にしまっておくことが出来なかった。

 社会的に弱い小娘には、余りに重すぎる借金だったのだ。

 だから、この結婚の話を聞いた時も、きっと驚いたに違いなかった。

 式の時も、一番最初に駆けつけてきて、1人で控え室に飛び込んで来て、事情を聞かれたのだ。

「政略結婚とかじゃないでしょうね!」

 一緒にいたハルコも、びっくりして目を丸くするくらい。

 どんな挨拶よりも先に、飛び込んでくるなり言われたのだ。

 あんな別れ方をして、それから音信不通で、挙げ句、どこかの会社社長を結婚をするという話が飛び込んできたのである。

 その前に、一度ハガキを出してはいたが、その程度の文章だけでは、彼女の不安は拭い切れなかったのだろう。

 彼女なりの表現で、『政略結婚』という言葉しか思いつかなかったらしいが、要は借金のカタに、ムリヤリ結婚させられるのではないかと思っていたのだ。

 カイトの、社長という肩書きがいけなかったのか、相手をかなり年齢の離れた年寄りだと勘違いしていたのも、その理由の一つだ。
< 478 / 633 >

この作品をシェア

pagetop