冬うらら2

 ユウは1分を切ったどころの話ではなく、そこからさらに18秒も短縮したのである。

 きっと、これは制作者も驚かすことができると思っていた。

「へぇ…でも、オレは39秒で倒したぞ」

 しかし、予想外の反応が返ってくる。

 陸揚げマグロの中の1人が、大人げなく、さも自慢げに張り合ってきたのだ。

 しかも、その内容は、ユウよりも更に上の数字で。

 えーっ!

 これまでユウがうち立てた、誰にも勝てないだろうと思っていた自慢の記録が、ガラガラと崩れ落ちていく。

 どんなゲーム雑誌だって、50秒を切った話さえ書いてあったことはないのだ。

 その決定的画面を、写真におさめて投稿しようと、もくろんだくらいだった。

 慌てて、母を呼びカメラを持ってこさせ、いざ撮影。

 パシャッ。

 しかし。

 現像された写真は、テレビ画面の上に白い光が激しく反射していて、何も見えなかった―― そう、フラッシュをたいてしまったのである。

 そして、42秒は幻となったのだ。

『うわーん!!!!!!』

 写真を見ながら、大声で泣いてしまったユウだった。

 しかし、彼の中では真実42秒という記録は残されているワケで、いまでは言葉上での自慢となって、人に伝えるだけとなっていた。

 なのに。

 夢を売る鋼南電気の社員に、あっさりその記録を塗り替えられてしまったのだ。
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