冬うらら2

 バン!

 控え室のドアを、力一杯押し開けた。

「きゃっ!」

 その勢いと音に、驚いた女の悲鳴が上がる。

 はっと、聞き覚えのあるその声に視線を向けると――

 ウェディングドレスの背中のファスナーを、半ばまで下ろしかけた彼女が、こっちを見ていた。

 そのファスナーを下ろしかけていた仕事中の女も、びっくり目で固まったままこっちを見ている。

「あっ、あの…新郎さんのお召し替えはございませんので」

 他のスタッフが驚きながらも、カイトを控え室から追い出そうとする。

 その数人を押しのけて、カイトは彫像になったままのメイの前まで歩み寄った。

「カイト…?」

 彫像の唇が、生命を吹き込まれたみたいに動いた。

 見上げてくる茶色い瞳には、疑問の色が溢れている。

 その中に映る、自分を探そうとした。

 疑問の色ではなく、カイトを好きだと思っているメイを探そうとしたのだ。

 しかし。

「新郎さん!」

「あの…」

 ここは。

 余りに、邪魔なものが多すぎる。

 二人の気持ちだけがあれば、カイトはそれでいいのに―― クソッ!
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