冬うらら2

「こい!」

 カイトは。

 メイの腕を、掴んだ。

 引っ張った。

 控え室から連れ出した。

 後ろから呼び止める声など、完全に耳に入っていなかった。

 いや。

 それでも、まだ足りない。

 公共の空間にいる限り、誰も彼もがカイトの邪魔をする。

 こんなに深い気持ちが暴れているというのに、抱きしめること一つ出来ないまま、苦しめられ続けるのだ。

 もう。

 ダメだった。

「カイ…っ!」


 驚いたままのウェディングドレスを、彼は――。
< 489 / 633 >

この作品をシェア

pagetop