冬うらら2
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うずうずする口をこらえきれず、いきなり先客の横から首を突っ込んでしまったのだ。
「いやぁ…怖いお人かとおもてたら、実はめっちゃ愛妻家っちゅーヤツやったんやな…そーか、そやったんかぁ!」
これで、オレとあんたは友達や!
勝手なことを思いながら、タロウはお酌をしまくった。
既に先客に注がれているワインに、社長は口をつけていなかったものの、なみなみになるまで続いて注いだのだ。
「いやぁ、えらいベッピンのヨメはんやもんなぁ…ありゃあ、愛妻家にもなるわなぁ。うんうん…オレかて、惚れそうや」
こう言えばタロウは、社長の気分が素晴らしくよいものになると思っていた。
親近感で口が軽くなったのと、会社関係の処世術も交えて、かなり大げさな表現だったのは認めるところだ。
しかし、ここは披露宴会場―― 少々の無礼講は、許される場所のはずだった。
が。
タロウの背中に、冷たいものが走った。
強いて名前をつけるなら、一番近いものは『殺気』だっただろう。
あかん! やられる!
その睨みに身の危険を感じた彼は、無意識に飛び退いていた。
手に持っていたワインのビンが、タプンッと大きく揺れた音だけが、はっきりと耳の中に残った。
一瞬、このまま西部劇の決闘のような緊迫感が続くのかと思ったが、そうはならなかった。
そして、タロウの命も、取られることはなかった。
代わりに。
鋼南電気の社長は、ハヤテのように会場から消え失せてしまったのだった。
な、何なんや、今のは…。
呆気にとられたままのタロウの鼻から、丸メガネの片方がずり落ちた。
うずうずする口をこらえきれず、いきなり先客の横から首を突っ込んでしまったのだ。
「いやぁ…怖いお人かとおもてたら、実はめっちゃ愛妻家っちゅーヤツやったんやな…そーか、そやったんかぁ!」
これで、オレとあんたは友達や!
勝手なことを思いながら、タロウはお酌をしまくった。
既に先客に注がれているワインに、社長は口をつけていなかったものの、なみなみになるまで続いて注いだのだ。
「いやぁ、えらいベッピンのヨメはんやもんなぁ…ありゃあ、愛妻家にもなるわなぁ。うんうん…オレかて、惚れそうや」
こう言えばタロウは、社長の気分が素晴らしくよいものになると思っていた。
親近感で口が軽くなったのと、会社関係の処世術も交えて、かなり大げさな表現だったのは認めるところだ。
しかし、ここは披露宴会場―― 少々の無礼講は、許される場所のはずだった。
が。
タロウの背中に、冷たいものが走った。
強いて名前をつけるなら、一番近いものは『殺気』だっただろう。
あかん! やられる!
その睨みに身の危険を感じた彼は、無意識に飛び退いていた。
手に持っていたワインのビンが、タプンッと大きく揺れた音だけが、はっきりと耳の中に残った。
一瞬、このまま西部劇の決闘のような緊迫感が続くのかと思ったが、そうはならなかった。
そして、タロウの命も、取られることはなかった。
代わりに。
鋼南電気の社長は、ハヤテのように会場から消え失せてしまったのだった。
な、何なんや、今のは…。
呆気にとられたままのタロウの鼻から、丸メガネの片方がずり落ちた。