冬うらら2

「新郎と新婦の出会いは、まさに突然…そして、一瞬にして恋に落ちたと聞いております」

 周囲の騒然も置き去りに、ソウマは本題をしゃべり始める。

 最初に落とした大型爆弾など、どこ吹く風だ。

「その時も…新郎は、彼女を誘拐して連れ去ったということですが、その勢いは健在のようです」

 落ち着かない進行係を横に。

 慌てるスタッフを遠くに。

 目を白黒させる客を、向こうに全部並べて。

 ソウマは、二人のことをしゃべり続けるのだ。

「こういう話は、おそらく新郎がいる前では絶対に言えないのですが…だからこそ、今がチャンスとばかりに私がしゃべっているワケです。後からこのビデオを見て、きっと新郎は地団駄を踏んで怒ることでしょう」

 最初は騒然としていた会場内も、次々に「あの」カイトが、いかにメイという存在を、愛して愛して愛しちゃってるのかというエピソードを聞かされ続ければ、次第に笑いが起き始めた。

 カイトを知る者は、『しょうがないなぁ』という苦笑に変わる。

 無茶をやる人間であることを知っているのは、ソウマやハルコだけではないのだ。

「大体…あの新郎の性格で、ここまで結婚式や披露宴を我慢していたということ自体、奇跡だと思いませんか? これも一重に、新婦への愛のなせるワザで…」

 そうして。

 ソウマは、口先だけで場を和ませてしまった。

 あなた。

 ハルコは、思った。

 一流の詐欺師になれるわよ。


 素晴らしい友人代表の挨拶は、予定時間を遙かにオーバーし―― カイトの彼女への気持ちは、ほぼ丸裸にされてしまったのだった。
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