冬うらら2

「いや、そういうのじゃなくて……」

 まだ、苦い顔の彼に。

「あ、イチハラさんたちも、ご夫婦で二次会に見えられるんですよね?」

 社長の話を、いろいろ聞かせてくださいよ。

 開発の一人が、通りがかりに誘ってくる。

 カイトのことを暴露したソウマは、本日のヒーロー扱いされてもおかしくないほどだ。

 だから、ハルコの夫であることを除いても、誘われておかしくない立場である。

「ええー! ハルコ先輩の旦那さんなんですか? あの、伝説の??」

 女の子の一人が、聞きつけて話に飛び込んでくる。

 その時の、ソウマの顔と言ったら。

 あいた。

 そういう表情だったのだ。

 あら。

 そこでようやく、ハルコは合点がいった。

 なぜ、鋼南電気社員が大勢集まる二次会に、ソウマが出たがらないかという理由が。

 ふぅん。

 にっこり。

 彼女は、笑顔で夫を見る。

 バツが悪そうに、ソウマは眉を上げた。

「仲良く、一緒に行きましょうね?」

 色々思い出したわ―― そういう含みを込めて、夫を誘う。

「やれやれ…」

 首輪をはめられ、BGMにドナドナを流しながら、ソウマは妻に引かれて行くことになったのだった。
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