冬うらら2
●11
「そろそろ夕食の支度を…」

 遠慮しながら、ようやくメイは彼らの話を止めた。

 もう外はすっかり夕方だ。

 山のような決定事項を見せられながら、彼女はその度に悩まされた。

 カイトは、すぐそこで仕事をしているけれども―― 背中が、怒りのオーラを伝えてきていたので、ウカツに声がかけられない。

 どう返事をしたらいいか分からない時は、じっと彼の背中を見てしまった。

 本当に、いいの?

 まず、最初の一歩目から不安だったからだ。

 いまにも、彼が振り返って怒鳴り散らして、それでもってすべてを踏みしだくのではないかと思っていた。

 それがイヤだということではない。

 どちらかというと、そっちの方が自然なように思えたのだ。

 なのに、いまのカイトは、不自然なまでに怒りを押し殺しているのである。

 イラついた指が、キーボードを乱暴に叩いているのが分かる。

 その音に、彼女はビクッとしてしまうのだが、ソウマたちは、まるで何も聞こえないかのようにニコニコしたまま、具体案を進めていくのである。

 結婚式場のアドバイザーなどを、もしもこの二人がしようものなら、すごく繁盛するのではないかと思ったほどの手腕だ。

「ウェディングドレスはどうしようかしら? 貸衣装のパンフレットもあるけど、思い出にオーダーするという方法もあるわよ…私の時は、ヴェールだけしか残さなかったけれども、これくらい広い家ですもの。ドレスの1着や2着とっておけそうよね」

 こんなのなんかどう?

 貸衣装のパンフレットを脇においやって、ハルコがオーダー用のカタログなどを見せ始める。

 ちょ、ちょっと待って。

 いきなり、ウェディングドレスのオーダーでどれがいいと言われても、それを彼女が決定出来るはずがない。

 第一、普通の結婚式では、わざわざそんなものを作る必要性がない。
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