冬うらら2

 それに、バレンタインデーまでちゃんと覚えていて―― チョコレートをもらえると期待しまくっているのだ。

 一応、小さなチョコを、バッグの中に忍ばせてはいたが。

 はぁ。

「あらあら、またそんな顔をして…」

 ため息をついたところを、隣席のハルコに見つけられて苦笑される。

 せっかくの二次会なのだから、楽しみなさいと言われたのだが、どうにもそんな気分になれない。

 会社関係の人たちばかりが、いる環境だからか。

 それとも、あんな披露宴を見てしまったからなのか。

「ほら、食べて飲んで…」

 気を使ってくれるハルコに悪いので、何とか作り笑顔を浮かべると、目の前にある皿に手をつけようとした。

 その白い皿の上には。

 フライドチキン。

 そういえば。

 リエはチキンを眺めたまま、ぼんやりと思った。

 そういえば―― フライドチキン、好きだったわね。

 そう思った直後、ハッと我に返る。

 慌てて、意識の中からいまの思いを振り払う。

 あの男がフライドチキンを好きだから、どうだって言うのよ!

 ムキになって、彼女はチキンを分解し始めた。
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