冬うらら2

「ええ飲みっぷりやなぁ…も一杯いくか?」

 近づくと、彼の隣に開発の女子社員がいるのが分かる。

 見れば、既にかなり酒が進んでいる様子だ。

 そういうことですか。

 シュウは、眼鏡をキラーンと光らせた。

 この女性を飲ませるだけ飲ませて、正気を失わせてから情報を引き出そうという魂胆のようだ。

 鋼南電気の副社長は、女性の方が口が軽いという統計を得ていた。

 それを、弱点として突いてきたと推理したのである。

「何よ! 私を飲ませてどうしようっての!」

 女性社員―― 確か、名前をハナと言ったはず。

 そのハナは、なかなか核心をついた質問をしてはいたが。

 しょせんは、酔っぱらいである。

 言葉に、冷静な判断力を感じることは出来なかった。

「何もせーへんて。ほら、チキンもあるで」

 そんな2人の間に。

「失礼します」

 シュウは、ずいと割って入ったのだった。
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