冬うらら2

 視界の中心に、茶色い瞳。

 その中に映る、自分が見えた。

 誰かの瞳に映る、自分の姿を気にしたことなどない。

 どう思われたってよかった。

 オレは、オレだ。

 なのに。

 メイの瞳の中の自分だけは、どんなことよりも気になった。

「結婚式も…披露宴も……」

 その瞳を前にすれば、懺悔する罪深い生き物になるしかない。

 言いたくはない言葉を、カイトは無理矢理喉から押し上げた。

 だが、それ以上は言えなかった。

 カイトは既に、いろんなもので限界だったのだ。

 今日一日のストレスだけで、胃潰瘍になりかねないほど。


 ただ。


 ただ、カイトは。


 メイを―― 独り占めしたかっただけなのだ。


 ずっと、一生。
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