冬うらら2

 カイトとあの子が、似ていると思ってしまったせいもあった。

 しかし、それを見届けるのは不可能だ。

 それに。

 少し残念ではあるが。

 ハルコには、カイトとメイという、フルコースが用意されていたのだ。

 オードブルからデザートまで、どれもこれも美味しくて楽しくてしょうがないフルコース。

 満腹になる人は、よその料理に手を出してはいけないのだ。

 彼らのことは、他の空腹な人に任せよう。

「でも、ちょっと苦労しそうね」

 苦労しそうなのは、ワンコの社長の方だ。

 ハルコは想像しながら、クスクスと笑ってしまった。

 あのパワフルな彼女を前に、どのくらい色男ぶりが通用するのだろうか。

「そうだな……食べないのか?」

 相づちを打ちながらも、彼女がポテトに手をつけていないのを見て勧めてくれる。

 油と塩にまみれたイモ料理を。

 食事に気を使っている妊婦に食べろと?


 もうちょっと、夫に意地悪がしたくなるハルコだった。
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