冬うらら2
□二次会をすっぽかした二人

「う…あ……」

 ついに。

 ついに、彼女に質問されてしまった。

 当たり前だ。

 あれだけのことをしておいて、お咎めナシのはずがない。

 自分で思ってみても、とてもじゃないが普通じゃないのだ。

 カイトは、大慌てで言葉を探した。

 身体の中の、隅々まで捜索して回ったのだ。

 どこかに、メイを納得させられる言葉があるに違いないと思っていたのに、見つかったのは、どう考えても見せられない気持ちだけ。

 独り占めしたかった。

 その、たった一言。

 他の誰かに、祝福して欲しかったワケではないのだ。

 ただ、彼女の瞳が自分を見て―― 自分だけを見ていて欲しかったのである。

 唯一無二の財宝を、手に入れたようなものなのだ。

 今回の結婚式や披露宴というものは、その財宝を秘蔵せずに、一般公開しろと言われ、展覧会に奪われていったようなもので。

 財宝は、誰にでも平等に光り輝くのだ。

 カイトには、そう見えて仕方がなかった。

 自分にだけ、その光が輝いて欲しかったなんて。

 どうやって、彼女に伝えればいいのか。

 その辺りの壁や床に、頭をガンガンと打ち付けたい衝動にかられる。

 言葉が出てこないもどかしさで、神経がおかしくなってしまいそうだった。

 しかし、逃げ出すワケにはいかない。

 彼女を視界から失うことだけは、今は絶対にしたくなかったのだ。

「オレは…」

 握っているのは、たった一つの言葉。

 その言葉に、せめてきらびやかな金メッキを塗りたくり、イミテーションの宝石でも埋め込んで、何とか体裁を整えて彼女に伝えなければならない。

「オレは……」

 光り輝く財宝を前に、そんなものを出すことになってしまったカイトは、今日一番のストレスにさいなまれたのだった。
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