冬うらら2
●
「オレは…」

　苦しそうにカイトが、その言葉を吐き出した。

「他の…他のヤツが、おめーをほめると…腹が立つ」

　メイは、首を傾げる。

　彼が言わんとしている核を、まだ掴みかねていた。

　だから、続きを聞き漏らすまいと、耳に神経を集中させる。

　カイトの言葉は、一言で千金だ。

　滅多に聞くことが出来ないだけに、重みがヒトシオで―― そして、彼という存在の断片を、はっきりと見せてくれる。

「おめーを綺麗だと、他のヤツが思っていると…たまらなく、イライラしちまう」

　しばらくの間の後、ぽつりぽつり、と。

　え？

　しかし、その内容はメイの動きを止めさせた。

　思いがけないものだったのだ。

　も。

　もしかして、それって？

　心の中が期待に膨れ上がる。

　まるで、自分を好きだと噂されている人に、校舎裏に呼び出された女子高生みたいな気持ちになってしまったのだ。

　これから彼に告白されるのかもしれない―― そんな、漠然とした幸福への期待。

　でも。

　それは、時として裏切られる。

　なーんだ、って結果になることだってあるのだ。
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