冬うらら2

 自分一人、先走って転ばないように、メイは自分のはやる気持ちを抑えようとした。

 カイトの行動や言葉は、逆転につぐ逆転になることが多いのだ。

 それが分かっているだけに、勝手な予想は立てまいとした。

「オレは…」

 しかし。

 メイの産毛が、ぴくんとその言葉に反応する。

 何か、とても大切なことが、これから言われようとしているような気配を、敏感に察知したのだ。

 言葉に含まれる温度も湿度も、そして緊張感も、何もかもが電気を帯びている気がして、彼女は動けなくなった。


「オレは……おめーを、オレだけのものにしておきてぇ…」


 クソッ。

 自分に腹を立てたように、カイトは悪態も一緒に呟く。

 だが、メイは、悪態なんて聞こえてもいなかった。

 その前に呟かれた言葉が、彼女の全身を麻痺させたのだ。

 オレだけのものに。


 天使の矢は―― 一直線に胸を貫通した。
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