冬うらら2

 こうして、したくもない式や披露宴もして、周囲の連中にメイが自分の妻であることを、宣言さえも出来た。

 なのに。

 彼女の気持ちを、フルセットで手に入れた気分には、全然なれないのだ。

 一瞬、狂おしい幸せの津波に、襲われる瞬間がある。

 なのに、ふと気づけば、波はまた引いているのだ。

 もっと、もっと。

 形が欲しい。

 歴史も欲しい。

 いや、彼女そのものが欲しい。

 そのものを、手に入れるためには。

 いまの自分では、まだ全然足りないように思えるのだ。

 こんな、器の狭い男のままでは―― っ!!??

 カイトは、ハッと瞳を見開いた。

 あんな告白をしてしまった自分を、責め続けていた彼に、潤んだ彼女の瞳が映ったのだ。

 ど、ど、どうしたーー!!!???

 こんな階段で、メイが涙ぐんでしまったのだ。

 ワケが分からずに、カイトはパニックになった。

 そんなに、悲しませるようなことを言ったのだろうか。

 そんなに、オレの器が小さいことに。

 グルグルと巡る疑問に、カイトは固まったままだった。

 そんな彼女の唇が、小さく呟いた。

「カイト…わたし……」

 そのかすれた声に。

 胸を痛めるばかりのカイトだった。
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