冬うらら2
☆水割り

 ようやくみな、飲み食いも落ち着いてきたようだ。

 席には、水割りが持ってこられ、少しオトナの雰囲気になりつつある。

 あのハナ嬢―― ハルコに名前を聞いた―― が、おとなしくなったというのもあるのだろうか。

 ソウマは、ようやくあの伝説についての追求の手が緩んで、ホッとしながら周囲の人間と話をしていた。

 ちょうど、そこに第一開発部のチーフが通りかかって、水割り片手にカイトや会社のことについて、話すチャンスを得ることが出来た。

「カイトは、彼女とどういう関係なんだろうな…」

 いまはタロウ氏の膝枕の上のようだが、酔いつぶれた結果に過ぎないので、彼女の希望かどうかはナゾだ。

 その前に、カイトに何か関係のありそうな発言をしていたことが、ちょっとは気になっていた。

 ソウマの狙い通り、色気のある内容なのか。

 それとも、まったく別次元の話なのか。

「ああ…」

 チーフも、ちらっと彼女の様子を確認すると、笑いたくてしょうがないような表情になる。

「いえ、心配することはないですよ。どうにもコウノは、彼女の尊敬する存在らしいので」

 開発の方では有名な話だと、カラカラ氷を鳴らしながら答えてくれた。

 彼の代わりに、氷が笑い転げているかのようだ。

 尊敬?

 ソウマは、苦笑した。

 尊敬する相手への態度とは、少し違うように思えたからだ。

 酔っていたから、あんな大騒ぎになっただけだろうか。

「ええっと、我々の世界では、ちょっといろんなことが普通と違うんですよ…」

 チーフは、開発の人間たちのことを、色々話してくれた。

 皆、それぞれに腕に覚えのあるメンツが、開発には揃っている。

 そんな連中が、ただ純粋に尊敬している存在がいて―― それが、カイトなのだと。
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