冬うらら2

 4ヶ月しか違わないが、一応アネさん女房ということになるのか。

 3月なんて。

 もう来月のことだ。

 あの2人が、新婚旅行から帰ってきたら、本当にすぐにメイのバースデイが来る。

 その記念すべき日を、どうやってあの2人は祝うのだろうか。

 女のアニバーサリーになんか、絶対に付き合いたくないようなカイトが、プレゼントを買ったりする姿を想像すると、彼女はたまらない気分になる。

「はぁ、社長は7月生まれでしたね…」

 しかし、ハルコの発言は、リエにとってはあまり好ましいものではなかったようだ。

「あら、ごめんなさい…せっかく忘れていたのにね。ところで…今日は、彼はお迎えにくるの?」

 自分一人、楽しむ話題になってしまったことを反省して、すかさずハルコは、秘書の彼のことへと話を切り替えた。

 するとリエは、複雑そうな―― でも、ちょっとツンとした表情になった。

「べ、別に…私は…」

 あの男のことなんて。

 あらあら。

 何か、困った恋をしているのか。

 それとも、ケンカでもしたのかしら。

 でも、どうにも彼氏のことが、気になっているのは確かだ。

「あ、私…二次会が終わるちょっと前に、帰らせていただくかもしれません…」

 しかし、ハッと思い出したかのように、ハルコに切り出してくる。

 その内容に、「残念だけど、いいと思うわよ」と返事をした。

 きっと、彼氏絡みのことに違いない思ったからだ。

 複雑な態度を見せても、やっぱり約束か何かあったのだろう。

 見られないのは、ちょっと残念だけど。

 そんな自分を、ハルコはまたたしなめた。

 フルコースのある人が、他の料理を食べたがってはいけない、と。

 あっちの方もね。

 奥の方の膝枕を見て、クスクスと笑ってしまった。

 そういえば。

 あのワンコの社長を見て、思い出したことがあった。

 彼女は、この場所でしておかなければならない仕事を、一つやり残していたのだ。

 リエに一言伝えると、ハルコは席を立った。
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